東海銀杏会通信 No.11 |
発行日:H14.7.30 発行人:東海銀杏会 編集人:藤村 哲夫 |
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平成14年度 総会報告 |
常任幹事・広報副委員長 淺野道子(35経)
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H14年度 総会講演 大学改革 〜その社会的位置づけ〜 |
名古屋工業大学学長 柳田博明(38工博)
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![]() 柳田博明氏 |
昨年11月より現職に就任した。東大では先端科学技術研究センター長も務めたが、在任中、東大は欧米諸国に比べて社会貢献度が低いと批判していた。知的中核として文化的に寄与していないし、起業もしていないし、人材育成とくに生涯学習の受け入れも不充分であるという点で、である。 東大は、世界の大学の中で60数番目と言われているが、私の実感ではもっと悪い。 名古屋工業大学学長への就任は、いわば落下傘降下人事で、私が指導した教官は一人もいなかった。 いま取り組んでいる改革を紹介する。 1.工科系大学改革の原点 工科系大学に対しては、活力ある社会創成の起動力として、産学連携による新産業創出と技術を機軸とするビジネスマン育成への期待がある。 大学改革の要点 ●遠山(文部科学大臣)プラン……改革を加速する好機と捉え、積極的に対応する(全学集会等) 今までは、教授会が文部科学省や社会より偉かった。 2.社会に対する説明責任(アカウンタビリティ)と意見聴取について 工学系大学の改革にあっては、改革の方向、再編・統合を基軸とした「工科大学構想」を国民、とくに産業界に対して十分に説明し、強力な支持を得ることが大切である。 3.本構想の背景 わが国の未来に対する現世代の責任の達成には、とくに技術立国を目指すわが国にとっては、工業系の名を付した大学の存在感を高めることが必要である。 4.本構想の骨子 ●工学(技術)を基軸とし、21世紀を切り拓く責任を自覚させる全人教育の実施 大学院は先生の数だけ講義がある。カリキュラムに芯がない。これを改めるため、教育ポリシーに基づき、カリキュラムを組み、それにふさわしい教官を配置しようと考えている。専門を換えさせたり、産業界から人を求めることもできるはずだが、学内での審査基準を適用すると、大部分の人が不適格と判断されてしまう。もっと規制を緩和して産業界からの教育への協力が必要である。教育面での産学連携の必要性を痛感する。 5.再編、統合への視野 地域に立脚し、特徴のある工科系大学間の連携を戦略的に再編する。単位互換、カリキュラム調整、人事交流、学生交流などを早急に検討する。 6.産学サミット(2001/12/15)での根幹 学際性、公開性、国際性、流動性、迅速性(競争含む)を重視する。 7.ベンチャービジネスについて 「個」尊重の社会構造を!これをベンチャービジネスに期待する。 8.技術倫理とは 100年後に残す仕事は、孫の孫のために技術倫理にもとらないことが大切である。孫にじいさん、ばあさんの仕事の自慢ができることが、22世紀につながる仕事となる。 9.この地域への期待と不安 この地域が栄えているのは、一人ひとりが技術をしっかりと持ち、その人たちが、チームワークを組んで仕事をしているからだと思う。ある部分について、この部分は要らないと切り捨てると、それにリンクする先がバラバラになる。相互の協力が大切である。 10.質問への回答 本講演では多くの質問が出された。その中で2つを紹介する。
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二十一世紀の東京大学 東京大学広報誌「淡青」第6号(2002.2)掲載 |
常任幹事・広報副委員長 淺野道子(35経)
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私は昭和31年法経コースの文一へ入学した。女子学生はわずか3人であった。あこがれていた東大は私にとっては幻滅で、あの駒場での授業は、わくわくさせるものは何もなかったことを、40数年もたっても思い出す。卒業する時も女子には門戸が開かれておらず、私は地方公務員になったが、そこで世間の、東大卒業生へ寄せる期待の大きさには愕然とさせられた。東大を出ていることがマイナスにしかならず苦労をさせられた。男性に遅れて昇進するたびに、家庭との両立に血の出るような努力をしていても「東大を出ているから当然」の一言で片づけられた。
私は発足当時から東海銀杏会で広報を担当していて幹事をやっている。そこで、断片的ではあるが、色々な人に出会ったので、感じた事を率直に述べたい。 第一に組織に護られて安住している人もいる。肩書きをすべて取り払っても付き合っていきたい人がどれだけいるだろうかと思わされる時がある。創造性を求められるノーベル賞に、なぜ卒業生が少ないのか。人の痛みへの思いやりが少ないと感じる時もある。優遇されて当然だと思っているところがありはしないか。最近の不祥事に卒業生が多く関わっているのを、私はとても恥ずかしいと思う。 生涯学習社会と言われて久しいが、学歴より学習歴を重要視する社会となり、諸悪の根源は東大だと言う人も多くなった。今までのままの東大であれば、東大不要論も出て来るであろう。国民の税金への関心が強くなるにつれ、その運営のありかたへの注文と風当たりが強くなろう。余程思いきった改革がされない限り生き残れないと思う。 第二は入学制度の改革。単線でなく社会人を多く受け入れていくこと。入学すればそれで人生が終わったかのように、スタミナの切れたお坊ちゃん、お嬢さんを受け入れるのでなく、本当に勉強したい人を、生活を助成しても受け入れて欲しい。これからの国を背負う人材の養成こそ最重要課題である。 第三は税金で運営するには限界がある。明治期の西欧文明の取り入れ、高級官僚養成の役目は終わった。先輩達に国費で卒業させてもらったという自覚が欠如している。国立だからとあぐらをかいていては、世の中から見捨てられよう。また、有能な頭脳が外国へ流出するのを防ぐ対策をとってほしい。 第四は外国の学生や女子学生はまだ少数だから、もっと門戸を広げると良い。女性の卒業生は各自とても努力していて、おおむね評判が良い。これからは企業のトップへもアメリカのようにどんどん進出するだろうし、その事を私は期待したい。素晴らしい知能と人格の持ち主、そして世界をリードしていく人材の養成、これからの東大に求められるのは、このことに尽きる。
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初めての「ホームカミングデイ」盛会裡に 東京大学同窓会連合会21世紀記念事業・参加報告 |
嶋田 晋(55工修)
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![]() 東大グッズ(ワイン・お菓子等)の販売風景
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21世紀を機に、卒業生の母校への理解と懐旧を促し、その連帯感を深めることを目的とした記念事業「ホームカミングディ」が、6月8日(土)、本郷キャンパスにて行われました。この記念事業は2002年春から5年間にわたり、毎年1回程度実施される予定です。今回は大成功を納めた第1回目の様子をご報告します。
まだ6月というのによく晴れて暑い土曜日、多くの卒業生が、いそいそと安田講堂を目指して歩いていました。 受付を済ませ、係員に誘導されて入った安田講堂はひんやりしていて、正面の壁画に懐かしい歴史の重みを感じました。 講演に先立って、連合会長向坊隆氏の挨拶がある予定でしたが、代わって東京銀杏会会長石川六郎氏が挨拶されました。(向坊隆氏は7月4日ご逝去) 続いて、佐々木毅総長が「これからの東大を展望して」という題で、教職員7,500名、学生29,000名、留学生2,000名を抱える大所帯の東大の現状と今後について30分間講演されました。今後の東大の課題として、次の4点が挙げられました。 1.研究資源の有効活用 2.教育の仕組みのデザイン 3.社会との連携 4.UI(ユニバーシティアイデンティティ) とくに3、4は、同窓会と関係が深く、UIについては、校歌や校旗がないために帰属意識が希薄であることが指摘されました。 続いて、藤原正彦お茶の水大学教授が「日本のこれから、日本人のこれから」という題で1時間講演されました。 明治以降のわが国の近代化の中で支配的であった欧米流の論理的思考と合理的精神が、最近、ほころんできたという指摘に始まり、数学者らしく「なぜ論理は破綻するのか」という証明をされました。そして、その論理に代わる価値観として、情緒を重要にしなさいという主張を展開されました。論理を最も大事にすると思われる数学者としては意外な発言でしたが、作家を両親に持ち、随筆家の肩書きから納得できるお話で、強い説得力がありました。 最後に応援部OBによる「ただ一つ」の斉唱で安田講堂での講演会は閉会になりました。 安田講堂には常設の太鼓があって、すぐに舞台の横から出てきたのは驚きでした。講演の参加者は600名位でした。 次に構内見学に移り、構内7ケ所を参加者が自由に見学できるように準備されていました。普段見ることのできない「懐徳館」の庭園に入ることができるなど貴重な体験ができました。他にも総合博物館など貴重な資料を当日特別に拝見することが可能でした。 午後4時30分より、安田講堂地下の中央食堂でメインイベントとも言える懇親会が開催されました。一人1,000円の会費で、発泡酒とつまみが出ました。ここでは東京銀杏会代表幹事日吉章氏と関西東大会会長新宮康男氏からの挨拶があり、余興として美人歌手(残念ながら東大OGではない)によるカンツォーネ独唱がありました。再び応援団OBの演技と応援歌の斉唱で閉めました。 関西東大会は気合いが入っていて会の旗まで持ってきていました。 講演、見学、懇親会と盛り沢山の第一回ホームカミングデイは大成功でした。 受付に始まり、設営、誘導など多くの業務を分担された東大同窓会連合会と東大関係者のご尽力に感謝申し上げます。
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施設見学会・第2回(4/14・日) 「ノリタケの森・見学会」に参加させていただいて |
野原由利子(47育博)
野々村喜代子、清水たま子 |
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麗らかな四月の昼下がりに、ノリタケの森を訪れました。 あの日本陶器(株)が、このように変っていようとは、近くにいながら知りませんでした。ウエルカムセンターで皆さんを待つ間、ノリタケの最高級陶磁器を眺めゴージャスな世界に浸っていました。 皆さんが集まると別室に通され、ノリタケカンパニーリミテド元専務取締役鈴木啓志氏の明治37年に日本陶器が創立されるまでのお話を拝聴しました。これは受付で頂いたパンフレットにも載っていない貴重な内容で、要約すると次のようなお話でした。 ・・・ ペリーが来日して日米和親条約が結ばれ、続いて日米通商条約が結ばれた。これらは不平等条約で、それによって良質な日本の金貨が大量に流出していった。 ・・・ 日本経済の命運を背負って努力した方々の苦労話を丁寧に伝えてくださった鈴木氏のお話、そして藤村哲夫氏の「やはり『経済も人なり』ですな」というまとめのお言葉に深く感銘を覚えた1時間でした。
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三英傑の遺構を訪ねる会・第1回(3/10・日) |
世話人 清水順二(49工)
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![]() 大須観音から、いざ出発!
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初回は15人が1万5千歩の旅 去る3月10日、三英傑の遺構を訪ねる会の記念すべき第1回が開催されました。今回のテーマは『信長のデビュー』でした。 朝10時、集合場所の大須観音には、老若(?)男女合わせて15名が集り、大須萬松寺から清洲、桶狭間へ、地下鉄、名鉄を乗り継いでの1万5千歩の旅でした。幸い天候にも恵まれ、春先の行楽を楽しむことができました。 有松宿の寿限無茶屋での打ち上げにも12名が参加、快い疲れと共においしいお酒で夕刻までおおいに盛り上がりました。 次回は10月13日(日)、テーマは『信長の出世』として、小牧山城、江南方面、岐阜城を車を利用して訪ねる予定です。期日が近くなりましたら詳細をご案内します。 興味のある方は、FAX又はEmeilにてお知らせ下さい。 連絡先:山田商会常務取締役 清水順二
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旅行クラブ(5/20・月〜22・水) 「長州を訪ねる旅」に参加して |
細田靖男(28法)
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![]() 青梅島の景勝
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今回の旅は、感激と感動の連続でした。 一行は、池沢宏郎氏(33薬修)、畑長年氏(37文)、木戸泰明氏(42工)と小生の各夫妻に、ご案内役の藤村哲夫氏(29工)の9人でした。 予め藤村氏から「故郷紹介」という詳しい自作の案内書を頂いていましたので、十分な予備知識を持つて訪ねることができました。 大自然の造形物に心を奪われ 5月20日午前11時30分、新幹線小郡駅の改札口に白木屋グランドホテルの半纏を着た藤村氏の姿がありました。 長州の風土が生み出した芸術 翌5月21日は晴天で風もなく、朝一番の観光船で青海島一周観光を楽しみました。日本海の荒波に削られた奇岩、絶壁、大小の洞門が続き、船の可愛いガイドさんの笑いに満ちた案内に夢中になって見上げたり、見回したりしているうちに1時間半の見物が終わっていました。 歴史が今も息づく街、萩・山口 22日は最後の日になり、午前中は、明治維新の故郷、萩市を訪れました。藤村氏の旧制高校の級友の方が、定年退職後、萩市の観光案内ボランティア会の会長をされていて、小雨中を丁寧に萩市内を案内して下さいました。維新の頃の萩市内の武家屋敷、土塀、屋敷の中の夏蜜柑の木など、そのまま残っていて、町そのものが博物館のようでした。
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東海銀杏会ゴルフ同好会 平成14年度 第4回ゴルフコンペ報告 |
「会員の把握が今後の鍵」 世話人松林正之(41農)
第4回・東海銀杏会ゴルフコンペが4月21日(日)、ベルフラワーカントリークラブでおこなわれました。 「ゴルフは他力本願」ゴルフコンペ優勝者仲島 聰(42工) ゴルフって分らないものです。思う処があって、しばらくゴルフ断ちをしていました。したがって今回は久しぶりのゴルフ。しかも、当日は生憎の雨。1番ティグランドに立った時には、どうなることかと不安でいっぱいでした。
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東京大学音楽部管弦楽団 サマーコンサート2002 開催のお知らせ |
恒例の東京大学音楽部管弦楽団「サマーコンサート2002」が下記の通り催されます。 東海銀杏会会員の皆様には、お友だちなどお誘い合わせの上、ぜひ、ご出席頂き、後輩の活動をご支援下さい。 日 時●8月3日(土)(18:00開場、18:30開演) 場 所●三重県総合文化センターホール(津市) 曲 目●N.リムスキー・コルサコフ・交響組曲「シェヘラザード」 R.シュトラウス・交響詩「ドンファン」 L.V.ベートーベン・歌劇「フィデリオ」序曲 入場料●1,000円・全席自由 前売り●チケットぴあ(052-320-9999) 当団HP●http://webs.to/todaiorch/ お問い合わせ●千種(090−4443−0146)又は上記HPアドレス迄
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編・集・後・記 |
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第11号をお届け致します。本号は、新旧同好会への参加記事をたくさん頂いたので、充実した編集をすることができました。 文中に見られるように、それぞれの同好会に参加されたみなさんにたいへん喜んで頂いていることは、お世話をする方でも励みになります。これまで、参加を遠慮されていた方々も是非ご参加下さい。 今回は記事をたくさん頂いたので、2頁増やして10頁にし、連載中の「地域同窓会紹介」と「東京大学の沿革」を割愛しました。ご了承下さい。さらに記事が増えれば増ページも考慮します。一層のご寄稿をお待ちしています。 柳田学長の大学改革には、心からの声援を送ります。編集子も、企業から大学に移って9年間教職にありました。その中で大学の根本的な改革の必要性を身をもって体験しました。このままでは、大学は、どんどん新しい方向に向けて進んでいる実業界から遊離してしまいます。 改革には抵抗は付きものです。しかし、名古屋工業大学が柳田先生を学長にお招きしたことは、改革をしなければと思っている人たちが学内にはたくさんいることを示しています。その声援をバックに、わが国の教育改革の先鞭を付けて頂きたいと切望します。ご成功をお祈りします。 東京大学広報誌「淡青」に大学の総務部の要請によって、淺野道子広報副委員長が小論を寄せられました。「本学の未来への期待・提言」というテーマでの寄稿依頼でしたので、それに応えての提言です。母校東大を愛すればこそ魅力ある東大の出現を待ち望んでいます。 わが国を代表する本学が国際評価で六十数番目とは誠に情けないことです。過去の権威や栄光に依存することなく、大学関係者の奮起によって新しい東大の出現を望みます。 同窓会もその実現に向けて、少しでも力になれればと思います。
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